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それとは何か?『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (河出文庫 や 33-2)

目次

先日、だぶるばいせっぷすの木村ゆうさんが『史上最強の哲学入門』について書いていた。

kimniy8.hatenablog.com

『史上最強の哲学入門』は自分が哲学に興味を持ったきっかけで、多大なる影響を受けた。

どれだけ影響を受けたかというと、「哲学?なにそれいみわかんない」から「哲学って・・・すげぇッッッ!!」くらいにはなった。

西洋哲学の入門書である『史上最強の哲学入門』の内容は木村さんの記事を参考にしてもらうとして、その続編で東洋哲学の入門書である『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』について書いていく。

西洋哲学よりもわからない東洋哲学


本書の中で、西洋哲学は階段型、東洋哲学はピラミッド型と説明される。


階段を一段一段上がるように、論理を積み重ね、真理を目指すのが西洋哲学だ。
西洋哲学の難解さを著者はドラマを途中から見ることに例えている。1話完結型ではないドラマを第18話から見始めても、理解できないのは当然だ。第1話から見直すか、時間がなければドラマのあらすじを読むべきだろう。

つまり、個々の哲学者の主張を掘り下げていく前に、哲学史のながれを追っていけば、西洋哲学は理解しやすいということ。
前作がこの形式で書かれて、大変わかりやすかったので、著者の主張には説得力がある。


ところが東洋哲学は、真理に到達したところから始まる。真理に到達したその流派の開祖を頂点に、その弟子から弟子へ(さまざまな解釈をされながら)受け継がれていくという特徴がある。

例えば、仏教は釈迦を頂点としているし、儒教の開祖は孔子だ。
釈迦や孔子(の言葉)をピラミッドの頂点に、後世の人が自分なりの解釈を加えていくので、その裾野はどんどん広がっていくことになる。

だからホントウのところは頂点にいる開祖しかわからない。『本書を読んで東洋哲学を理解することは不可能である』という一文からこの本は始まる。

だったらどうする?

だったら読む意味ないだろ!!と思うかもしれない。だが東洋哲学にはなんとか他人にわからせようという挑戦の歴史がある。

 

例えば禅宗の「不立文字」という言葉。禅は言葉で理解することは不可能で、体験(座禅)によってしか真髄に触れることができないという意味だ。
しかし、禅にはたくさんの書物がある。古くは栄西道元、江戸時代には沢庵や白隠。現代でもジョブズが愛読したという『zen mind beginner's mind』など多くの禅書が出版されている。

禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)

禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)

 

 本来は文字で伝えられないはずの禅だが、それでも何とかして理解させようという試行錯誤の結果として、多くの禅書が存在するのだ。

本書でも、そんな先人たちの意志を受け継いで、本来理解できないはずの東洋哲学を、図を使い、例え話を使い、ありとあらゆる方法でなんとか読者にわからせようという心意気が伝わってくる。

東洋哲学の流れ

ピラミッド型の東洋哲学だが、本書では大きな歴史の流れで説明される。

古代インドのバラモンの哲学から始まり、仏教の開祖釈迦と中興の祖である龍樹。孔子老子など、中国春秋戦国時代諸子百家。そして日本に伝わった仏教は独自に発展し、革新派の念仏と保守派である禅に分かれる。

多少強引にまとめている感じは否めないし、著書の主観が入っているので、西洋哲学編に比べると異論も多いと思う。

しかし、こうして並べると流れのようなものが見えてくる。インドで誕生した東洋哲学が、中国へ渡り、日本に来た。東へ・・・向かって。

こんな人におすすめ 

刃牙ファンは必読だろう。表紙絵からして板垣先生で、文章のノリも刃牙に近いものがある。しかし、刃牙を知らないor興味がなくても、著者の熱い思いを受け止められるのなら全然OKだ。

 逆にもっと冷静に東洋哲学の概要が知りたいなら、他書のほうがいいかもしれない。ただし、そういう人も著者の熱意に感化されて東洋哲学に興味を持つ可能性がある。

また本書は説明のしかたが非常にユニークだ。以下は東洋哲学における真理(仏、タオ、悟り)を体験したときの「それ」を説明した画像だが・・・

(位置No.4472より)

ニコニコ動画風の図を使うのは画期的すぎる。仏教でも道教でもいいが、他の東洋哲学の入門書でこんな説明のしかたがあるだろうか?

近年のネット文化に触れている人ならすんなりと読めると思う。

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (河出文庫 や 33-2)